「3秒でバランスシートが読める本」を読んでみました(要約・感想・レビュー)

 今回は、中村儀一氏著「3秒でバランスシートが読める本」を読んでみて、内容の要約と感想をお伝えしたいと思います。

※本記事はブログ主の主観にもとづいた要約と感想のため、実際の内容と多少違うと感じる部分もございます。予めご承知おき下さい。

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結論

 まず全体の内容の結論ですが、この本では会社の経営状況を調べる際、最も重要な情報源が「貸借対照表(バランスシート)」であることを伝えています。損益計算書で会社の経営状況を調べる方は多いですが、著者はバランスシートこそが、会社が本当に儲かっているのか、成長しているのか示していると考えています。しかし、バランスシートは損益計算書に比べて読み解くことがとても難しいため、より分かりやすくするために、本書ではバランスシートを箱型の視覚的に判別できる6つに種別することで分かりやすく解説しています。

※本書の熟読すべき重要な章:第2章、第3章

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バランスシートの6つのタイプ

 著者の紹介しているバランスシートの6つのタイプは下記になります。

1.債務超過(倒産寸前の会社)

 債務超過の会社のバランスシートは資産全体よりも負債全体の方が大きく、純資産がマイナスであることが特徴です。このようなバランスシートの会社は倒産寸前です。この状態を回避するには、「まず現実を見る」ことが一番重要であると著者は伝えています。このような会社の社長は現実逃避をしている傾向にありますので、まずは自社のバランスシートを見直し、1つずつ問題を解決していくことが一番の近道です。

2.自転車操業(綱渡りの資金繰り)

 自転車操業のバランスシートは、純資産はプラスですが、流動資産より流動負債の方が大きい状況です。このような会社は利益よりも売上を優先する会社である傾向が高いです。勢いがあるのはいいですが、固定資産が増えてしまい、必要以上にコストがかかっていることに目をつむっている状態です。このような会社もまず現実を再確認することから経営を立て直す必要があります。もしそのままの体制でいると売上が伸び悩んだ際、返済が間に合わず、債務超過へ落ち込んでいきます。

3.安定経営(大きな変化なし)

 安定経営のバランスシートは、純資産がプラスで、流動資産が流動負債より大きいですが、負債全体よりは小さい会社です。このような会社は資金繰りには困りませんが、大きな変化がない特徴があります。これは意図的に変化を作らないというよりは、進化ができない状態であることが多いです。その原因となるものが、経営者のKKD(勘、経験、度胸)、GNN(義理、人情、浪花節)に頼りすぎている点です。データや事実よりも感情が大事と考えています。これはどんぶり勘定にもつながり会社にとっては適切ではありません。このような会社は、データと事実と論理の管理会計に改革をすることで、成長経営のタイプの会社になることができます。

4.成長経営(余裕資金を投資に回して順調に拡大)

 成長経営のバランスシートは、純資産がプラスで、流動資産が負債合計より大きい会社で、現金預金は流動負債より小さいところが特徴です。このような会社は余剰資金を投資に回し、しっかりお金を稼いている会社です。投資も細かく計画した内容に基づいて行っているため、大きな失敗も少ないです。成長経営の会社では、マニュアルがしっかりしているため、誰でもレベルの高い仕事ができる様な仕組みを構築しています。また、取締役会を定期的に開き、データ、事実、論理に基づいて経営戦略を立てるため、安定して成長していきます。成長経営の会社の悩みとしては、会社が拡大途中のため、企業を一つにまとめることが難しくなることです。そのため、ビジョンを社員で共有できるかどうかが課題となります。

5.お金持経営(余裕の資金繰り)

 成長経営のバランスシートは、純資産がプラスで、流動資産が負債合計よりも大きいうえに手元の現金預金が流動負債よりも大きい部分が特徴です。何か問題が起きても滅多に会社が潰れることはないため、会社の雰囲気も穏やかです。お金持経営の会社は、管理会計のシステムの構築がすでにできています。効率がよく、教育効果も高いシステムですが、仕事はできるのが当たり前、できないことは問題という減点主義の考え方がはびこっています。そのため、新しい挑戦をする社員が少なくなりますが、それでも開発は必要なため、経営の重要役職である優秀な人材は養成し続けることが重要となります。また、この規模の会社は、コンプライアンス違反が会社に大きなダメージを与えるため、注意が必要です。

6.金満経営(潤沢すぎる資金と完璧なシステム)

 金満経営のバランスシートは、純資産がプラスで、現金預金が負債合計より多い会社です。このような会社は、経営システムが完璧に整っているため、何十年も会社が存続できる力があります。この会社の悩みとしては、法律問題が重要となりますが、専門家に高額な報酬を支払い、対策しています。安泰のため、安心できそうですが、逆に多く集まっているお金をただ寝かしているため、「老害」と言われる場合もあります。この状況を変える場合には、外部からの大きな影響により改革が行われる必要があります。

 会社は上記1から6の順に進化するため、経営状況を調べる場合は、その会社のバランスシートが現在上記6つのタイプのうち、どの位置にいるかの確認が重要となります。また、その時系列も見ることで会社が成長、停滞推移の状況を把握することができます。

 ちなみにこの6タイプのうち、成長経営以上が日本では優良企業とされていますが、欧米ではこの考え方は当てはまらず、株主の圧力が強いため、手元の資金はなるべく投資に回し、利益を極大化していく企業が優れているとされています。そのため、国際的にも展開している大企業は安定経営や自転車操業となっている場合があります。これは相当レベルの高い財務管理体制があるからこそ実現できます。

感想・まとめ

 本書を読むことで、専門家でないとなかなか理解出来ないような会社の貸借対照表(バランスシート)を、視覚的にとても分かりやすく理解することができる様になるため、調べたい会社の経営状況がどうなっているのかをより詳細に知ることができました。文章も図などを交えて読みやすいものとなっているため、株式などの投資目的で活用できることはもちろん、会社経営者や会社員の方にとっても、自分の会社が今どのような状況にあるのかを知ることができ、とても参考になる本であると思います。興味のある方は、是非一度読んでみてください。

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